臨済宗建長寺派 林香寺 住職・精神科医 川野泰周氏の逸品

マイ仏具―引磬 (いんきん) (銀鈴) ―

禅寺に生まれた川野さんは小1の時から僧侶の父の仕事を手伝い、法事では父の隣に座っていた。子ども時代から自然体で禅の世界に身を置いてきた川野さんが、小学校低学年の時に父から贈られた仏具が写真の引磬――携帯用の「おリン」だ。子ども心に嬉しく誇らしく、マジックで名前を書きこんだという。修行前ながら僧侶の一番下のほうの階位を与えられていたため、父の急逝後、檀家の許可を得て高校生のころから仏事を執り行っていた。その時からこの引磬はずっと川野さんの傍らに寄り添ってきた。住職となった今では「マイ仏具」の数は増えたが、それでも小学生のときに初めて手にしたこの引磬は今も現役。大切に磨きこまれた引磬は、川野さんの読経の声を聴きながら日々、輝きを増している。

川野 泰周(かわの たいしゅう)

臨済宗建長寺派 林香寺 住職・精神科医
1980年横浜生まれ。2004年慶応義塾大学医学部医学科卒業後、精神科医として診療に従事。2011年より大本山建長寺専門道場にて3年半にわたる禅修行、2014年末より横浜にある臨済宗建長寺派林香寺住職となる。現在は寺務の傍ら横浜市内にあるクリニックをはじめ複数のクリニックで、うつ病、神経症、PTSD、睡眠障害などに対し、薬物療法や従来のカウンセリングだけでなく、禅やマインドフルネスの実践を含む心理療法を積極的に取り入れた診療を行っている。またビジネスパーソン、学校教員、子育て世代の主婦など、様々な人々を対象に講演・講義も行う。代表的著書に『あるあるで学ぶ余裕がないときの心の整え方』(インプレス、2016年)がある。