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髙橋 ゆき●たかはし ゆき
香港在住時に体験したメイドに利便性を感じ、 「女性の“愛する心”を応援します」をコンセプトに1999年、 家事代行サービス、育児サービスの株式会社ベアーズを夫が起業。 妻として、専務取締役として創業期を支え、 以後日本における家事代行サービスのパイオニアとして人財育成も担当。
また、キッズからシニアまで暮らしの向上を研究し、 家事研究家、日本の暮らし方研究家としてテレビや雑誌、 講演会などでも活躍。1男1女の母。 著書『可愛くなる家事』(サンマーク出版)が好評発売中。
interviewer
森 啓一●もり けいいち
株式会社フォーカスシステムズ 代表取締役社長。
監査法人、税理士事務所を経て、1998年にフォーカスシステムズに入社。常務取締役管理本部長兼経営企画室長を務め、11年より現職。
主婦・母親業のキャリアを生かせる仕事の創出
森:前回は「家事代行サービス業」という日本初の業態を立ち上げてから軌道に乗せるまでのご苦労を伺いました。今回は女性の働き方や社会進出についてお聞きしていきます。当社の社員は約1,000人で女性は16%強ですが、御社の男女比はどのくらいですか?
髙橋:ベアーズは創立15周年で社員は160人ですが、男女比は男性のほうが多いですが、ここ最近では女性の割合も高くなってきました。
ご家庭などで家事代行サービスを行うベアーズレディは20代から83歳まで、4,300人ほどです。子育てを終えてからの再就職は難しいものですが、ベアーズレディは主婦業や母親業などのキャリアを丸ごと生かせる仕事です。
森:当社の女性社員の平均年齢は約30歳ですが、実際子供が出来ると、技術職の社員は相手先企業に常駐して働くので時短勤務が難しい面があるし、育休中の女性からは必ず「預け先が見つからなくて悩んでいる」という話を聞きます。
子育てに専念したい女性はそれを選び、「また働きたい」と思った時に時短や在宅勤務も含めて働ける環境を作りたいですね。
IT業界でも、ブランクがあっても経験がある人は、ゼロスタートとは全然違いますから。
髙橋:時短で働く女性が評価に値するアウトプットと実績を作れるように、会社側が努力しないといけないですよね。ベアーズもまだまだ女性が働きやすい環境とは言い切れないので、私も経営者としてその部分にチャレンジしているところです。
女性活用を成功させれば新しい世界が拓ける
森:母親になると保育園の迎えなどがあるため残業しづらくなり、かえって仕事の効率が上がります。
上の人にも物おじせず言いたいことをスパッと言うなど、母になると女性は変わるので(笑)、女性の強さと優秀さを実感しています。
髙橋:母親は見返りを求めない愛情で子どもを育てるから、子育てを経験すると働き方や組織の中での立ち位置が明らかに変わりますね。
ベアーズも私以外の女性役員は育休中の1人だけなので、今、幹部の会議は私以外全員男性!女性幹部社員を育成する作戦を練っているところです。女性でチームを作り、当事者が改善策を考える必要性も感じています。
森:当社でも女性社員はいろいろ要望を持っていると思いますが、そうした声がなかなか上まで上がってきません。
女性の声が活かされる仕組みがあるといいですよね。
髙橋:ただ、有能な女性ほど、会社から配慮されると肩身が狭い思いをするのも事実です。やるからには昇給昇格にもチャレンジしたいという女性をきちんと評価し、いきいきと働ける会社にしたいんです。
女性がそれぞれのペースで成長することに企業が寄り添っていかないとダメですよね。女性はポジションを与えると「自信がない」と言うしライフプランを考えてあげると遠慮するから、「育休明けに1年働いたらまた産休に入っていいよ」というくらい会社が応援してあげないといけませんね。
いい仕事をするためのベースとして、出産後も安心して働ける環境は絶対に必要ですから。でも残念ながら、日本では女性役員を何パーセントに増やすといった話ばかり。それでは心も体もぽっきり折れる優秀な女性が増えるだけです。
森:当社でも育児休業を取った男性社員がいるので、「子育てサポート企業」として厚生労働大臣認定の「くるみん(次世代認定)マーク」を取得しています。でも、そうした数値目標の達成だけではなく、環境を整えて上司や同僚も意識を変えていかないとダメですね。
髙橋:ベアーズは働く女性を甘やかすのではなく、新しい寄り添い方を考えていきたいと思っています。
企業や管理職の男性が「女性を使うのは大変」とか、「母になった女性が管理職を目指すのは難しい」と思い込んでいる部分もありますが、本当は傷つけない、不安にさせない――この2つだけを心に留めておけば、私は男女関係なく接していいと思っています。
そうして今まで諦めていたことができ、活用できなかったものを活用できるようになると、企業としても新しい世界が拓けるに違いありません!