リノベーションのほうがカッコいい!心が豊かになる空間をデザインする 株式会社夏水組【前編】

夏水組は、女の子なら誰もが憧れる、ガーリーな空間を演出する空間デザインの会社だ。夏水組がプロデュースする物件は、暮らしを大事にする女性から「一度は住んでみたい」と注目を集めている。リノベーションに使う装飾物や壁紙、夏水組がセレクトした内装材やオリジナル塗料などを販売するDIYショップ「GONGRI」も、1人暮らしの20代の女性から、インテリアにこだわりを持つ年輩の男女まで、さまざまな顧客でにぎわいを見せる。夏水組の代表・坂田夏水さんに、独立の経緯やリノベーションに着目した理由や夏水組のこだわりについて、話を伺った。

株式会社夏水組

 

2007年に坂田夏水さんが個人事業主として開業し、2010年に法人化。土地から建物まで既存の資産を有効活用し、リノベーションを中心に、古き良きものを大切にする空間づくり、街づくりを手がける空間デザインの会社。内装デザインにとどまらずコンサルティング業務や管理業務、シェアサイトの運営まで総合的な事業を営む。夏水組が手がけた物件を扱う不動産会社「こひつじ商事」、ガーリーな塗料や壁紙、建築金物などを扱う女性のためのDIYショップ「GONGRI」、飲食店「きっちん るもんぬ」も関連会社。著書に『夏水組のパリ風手作りインテリア』『初めてでも失敗しない! リフォーム&インテリア アイデアBOOK』など

起業の野心はなく、顧客増加の流れで独立開業

 アンティークショップをはじめ、個性的な店や飲食店が建ち並ぶ西荻窪に店を構える(株)夏水組のDIYショップ「GONGRI」。一歩足を踏み入れると、思わず「うわぁ〜!」と目がハートになるような、夢の空間が広がっている。色とりどりの壁紙や塗料、お姫様気分になれるアンティーク風の取っ手やフック…、若い女性だけでなく年輩の女性のグループやご夫婦が楽しそうに壁紙や装飾具を選んでいる風景が、実に絵になる空間だ。

 夏水組の代表を務めるのは、美術大学の建築学科出身の坂田夏水さん。大学卒業後は設計事務所で一戸建ての設計を担当し、その後、「工事のことを勉強したくて」工務店と不動産会社に転職した。転職先では主にマンションのリノベーションを担当し、施工、設計から現場管理までを手がけて知識と経験を積んだ。

 「起業したいという野心があったわけではないんです。個人的に仕事を頼んでくれる企業や個人の方が増えたので、28歳の時、流れで独立してしまいました」と、坂田さんは爽やかな笑顔で話す。夏水組は中古マンションのリノベーション企画、デザイン、設計から工事管理までを請け負うが、キュートで居心地がよく、独特のセンスで磨き上げられた物件ばかり。そのためコアなファンが多く、クチコミで仕事が引きも切らず、3年後には法人化した。


お店の華やかさに、リノベーションの期待も膨らむ

バックパッカーの時代にリノベーションに開眼

 そもそも坂田さんがリノベーションに目覚めたのは、大学時代だった。「もともと新築への興味は薄かったから、建築学科とはいえ学校にもあまり興味がなくて(笑)。アルバイトでお金が貯まるとバックパッカーとして旅行に行くという繰り返しでした」。

 アジアにもヨーロッパにも行ったが、観光地ではなく現地の人の生活ぶりが気になって裏路地に入って観察するのが好きだった。就職してからも留学している友だちのところに遊びに行ったりして、海外の日常生活を羨ましく感じることが多かったという。

 「外国だと、インテリアショップもピカピカ、つるつるの家具ではなく重厚感のある100年物のアンティークが置いてある。賃貸でも当たり前のように壁紙を張り替えられたり、扉や家具を好きな色に塗ったりできます。求めるものの違いを感じたし、新築よりリノベーションのほうがカッコいいと感じました」。スクラップ・アンド・ビルドではなく、古き良きものを大事にする方向性は、大学時代に芽生えた実感を踏まえた自然な流れだった。


思わず立ち寄りたくなる装飾

顧客のこだわりを引き出し信頼関係を築いていく

 坂田さんと同じように、ピカピカの住まいには魅力を見出さず、既存の建物を大事に生かした生活空間にこだわる人が夏水組の顧客だ。こだわりが強い顧客の好みを引き出すのに、苦労することはないのだろうか?

 「まずは服装やアクセサリー、雰囲気などを見て“何が好きなのかな”と想像を膨らませます。あとはお客さんにイメージ写真を見せて、“アンティークスタイルが好き”などと入り口を示してもらえればOK。そこからは具体的な内装材などを見せながら、一緒に好きな物を探す作業をしていきます」。

 ハウスメーカーがリノベーションを手がける時は通常7〜8回打ち合わせが必要だが、夏水組の場合は5回ほどで済むという。「要望とこだわりを持って夏水組のドアを叩いてくれているから、意外に打ち合わせは少ないんです。“ない要望”を引き出すのに比べれば、こだわりが多い方がいい。洋服を買いに来て“花柄のワンピースととんがった靴がほしい!”というお客さんに”それも素敵ですけど、このワンピースにはこちらの靴がお似合いですよ“と提案するのと同じです」。こだわりを満たしつつ、調和のとれた空間に仕上げるのが夏水組の腕の見せどころというわけだ。

 竣工後に家具が入って落ち着くと、パーティなどに招待してくれる顧客がほとんどだという。「私たちがプロデュースした空間で、お客さんが幸せに暮らしている姿を見られるとすごく幸せで、一番やりがいを感じる瞬間です」。


アンティーク風のインテリアが並ぶ

後編では、夏水組から派生したDIYショップのこだわりポイントや、不動産屋、飲食店、コンサルティングなど、夏水組の仕事の広がりや将来の展望について伺います!

暮らしを大事にするきっかけ作りを展開 株式会社夏水組【後編】