2012年にガチャガチャに初登場するや、幅広い年齢層の人気を集めた「コップのフチ子」。フチ子を産んだのは、ガチャガチャメーカー株式会社奇譚クラブ。1商品で20万個売れればヒットと言われるガチャガチャ業界で「コップのフチ子」の売り上げは累計800万個以上を記録した(2015年4月末現在)。ほかにも「土下座ストラップ」、「くいとめるニャー」など300万個以上を売り上げるヒット商品を続々と生み出している。そんな奇譚クラブの広報・しき”広報”せいたさんにヒットの秘訣から今後の展開までワクワクするような話を伺った。
株式会社奇譚クラブ
2006年に設立されたカプセルトイメーカー。土下座ストラップ、コップのフチ子などの「アーティストコラボ」をはじめ、江頭2:50などの「有名人・芸人シリーズ」や、最近では「スマホのおふとん」など、他社に真似できない圧倒的なクオリティと、どこにも無いアイデアで、ガチャガチャ業界を躍進中。
突然現れたゴリラの置物にびっくり!
新商品は毎月5アイテム ー 「少数精鋭集団」の奇譚クラブ
「コップのフチに舞い降りた天使」というキャッチフレーズで、2012年7月にガチャガチャにデビューした「コップのフチ子」。20万個を超えると大ヒットと言われるガチャガチャ業界で、「コップのフチに引っ掛ける」という新しい発想で瞬く間に人気となり、これまで累計800万個以上(2015年4月末現在)という驚異的な売り上げを達成している。
フチ子だけでなく、スマホスタンド「ここは俺がくいとめる! お前は先に行くニャー!」や「土下座ストラップ」など、300万個を超えるヒット商品をいくつも生み出しているのがガチャガチャメーカー「奇譚クラブ」だ。東京・渋谷区にある事務所を訪ねると、そこにたたずむのは瀟洒な一軒家。庭でゴリラの置物が出迎えてくれた。
社員はわずか10人程という少数精鋭集団だ。その人数で「毎月新しく5アイテム以上、年間で60アイテムを世に送り出しています。
ガチャガチャ商品は3か月前の受注生産で、基本的に「売り切り御免」の世界となっている。「“かわいい!” “ほしい”と思ったらその場で買わないと、次はない」という一期一会な部分もヒットの要因かもしれない。
全国30店舗限定商品の「コップのフチ子2 グレープ」!!
クスッという微妙な笑いがヒットにつながる
もともとガチャガチャはアニメや漫画のキャラクターの安価なおもちゃを売る「子ども向け」が基本。だが、奇譚クラブが打って出たのは「大人向けのガチャガチャ」。漫画家やデザイナーなどの作家とコラボレーションして、ガチャガチャ発のキャラクターを展開し続けている。
「企画が当社のすべて」としきさんは断言するが、毎月1回の企画会議で「1人最低1つアイデアを出す」といったノルマは課していない。「思いついた人が企画を提案するだけです」(しきさん)。企画書にはよほど細かいアイデアが書きこまれているのかと思いきや、意外なことに「イラストと商品名のみ」が基本だという。
なぜかというと「ガチャガチャとの出会いは一期一会で、出合った瞬間のインパクトが一番重要。細かい説明を読まないと分からないようではダメ。お客さんの心は掴めません。パッと企画書を出して社員全員がクスッと笑ったら、即商品化決定! ですね」としきさんは笑う。「クスッ」という絶妙な笑いがヒットにつながるツボかもしれない。
土下座ストラップでお馴染みの「シリーズ生きる」の最新作は…「がけっぷち」!?
消費増税や円安になってもくクオリティは絶対に下げない
奇譚クラブの商品はユニークなだけでなくクオリティが高いことでも定評がある。大ヒットとなった「コップのフチ子」も1つ1つ、手作業で作られているというから驚きだ。またシリーズに1種だけシークレットと呼ばれるものが存在し、通常商品の約10倍のコストをかけて作られる「超お宝」だ。
ガチャガチャは100円玉で買うのが基本なので、消費税が上がっても値段は据え置きだ。さらに海外生産のため円安も大きな負担になる。「苦しくてもクオリティは下げたくないですね〜」としきさんは力をこめるが、消費税10%が今後の大きな課題だ。
また、大ヒット商品の宿命は「パクられる」こと。フチ子のヒットに乗じて、他社からもキャラクターをフチにひっかける形の追随商品が続々と発売された。「フチの奪い合いになってきたので、他社に真似できないものを作ろう!」という声が上がり、開発されたのが「コップのソコ子」。「フチ子がコップの底に敷かれてつぶれている」キャラクターで、「フチに乗せるのは…正直、もう飽き飽きなんだよ」という衝撃的なキャッチコピーとともに登場した。「アニメなどの既成の人気キャラクターをぺちゃんこにつぶすことはやりずらいと思いますので…笑
「逆境を乗り越えるためには、発想の転換が必要です。それによって新商品が生まれ、待っていてくれるファンの方たちに“お、奇譚クラブまたおもしろいことをやっているな”と思ってもらいたいですね…笑」としきさんは目を輝かせて語ってくれた。
後編は「宣伝費ゼロ」でもヒット商品を生み出す宣伝戦略から、大ヒットしたフチ子のマニアックな楽しみ方、そして奇譚倶楽部の社員交流の話まで、奇譚クラブのバックヤード秘話をご紹介します。