guest
下村 朱美●しもむら あけみ
株式会社ミス・パリ 代表取締役
1957年生まれ。池坊短期大学家政学科卒業後、アメリカ留学などを経て1982年に大阪でエステティックサロン「シェイプアップハウス」(現:ミス・パリ)を立ち上げる。86年に日本初の男性専用サロン「ダンディハウス」をオープン。現在は「ミスパリダイエットセンター」など全国150店舗の直営サロンを展開。90年には「ミスパリエステティックスクール」を開校してエステティシャンの育成にも注力している。05年「世界優秀女性起業家賞」受賞。
interviewer
森 啓一●もり けいいち
株式会社フォーカスシステムズ 代表取締役社長。
監査法人、税理士事務所を経て、1998年にフォーカスシステムズに入社。常務取締役管理本部長兼経営企画室長を務め、11年より現職。
一生懸命なエステティシャンの姿を見て起業を決意
森:エステサロンに足を踏み入れたのは初めてですが、ゴージャスで優雅な気分になれますね(笑)!
下村さんは25歳で「シェイプアップハウス(現在のミス・パリ)」を始めたと聞きましたが、そもそもエステサロンに注目したきっかけを教えてください。
下村:短大、専門学校卒業後に留学しましたが、帰国して24歳のとき初めてエステティックサロンに行きました。
エステティシャンはお客様をきれいにしたい、喜んでほしいと一生懸命に施術したり化粧品を売ったりするのですが、「なぜそうするか」「なぜこの化粧品を使うか」という理論を持っていなかったんですよ。そんな一生懸命なエステティシャンを見ていて、理論が分かるサロンを作りたいと思ったのがきっかけです。当時も日本にエステティックサロンはありましたが、フランスやイギリス、ベルギーが進んでいましたから、そこから機械や化粧品や技術が入って来て、それを日本人が学んで提供していましたね。
森:エステは「おもてなし」のイメージも強いですが、これは日本人の得意分野ですね。エステは欧米が主流だったとはいえ、日本独自の「おもてなし」とドッキングしたことで、日本のエステは世界の中でもかなり上位に位置づけられているのではありませんか?
下村:その通りです。理由は3つあって、1つは日本の教育レベルの高さが群を抜いていることです。
日本では一般人もピアノやバレエを習いますが、欧米では貴族の習い事です。さらに、学校教育の中に水泳や絵画がありますが、海外では絵が描ける人が少ない国もあります。日本は幅広い分野で子どもたちを教育しますので、感性や美的感覚が磨かれています。
2つ目に、日本人は「人に何かをして喜ばれるのが嬉しい」と感じる民族です。たとえば「10万円のイスを作ってください」と言われたら「これが10万円のイスです」とビジネスライクに作る国や、5万円で作って売れたら「ラッキー」と喜ぶ国もある。
でも、日本人はより良いものにしようと15万円かけて作って、喜んでもらえたらそれを嬉しいと感じる、珍しい民族です。
私は海外に行くことが多いので、特にその違いを強く感じますね。
人のために何かしたい、喜んでもらうための努力を惜しまない。その特性は、日本人のDNAに刻まれているのかもしれません。
そして、日本人は仕事を生きがいにしますよね。“教育レベルの高さ”“おもてなしの心”“仕事にやりがいや幸せを感じる” ――この3つがあるから、日本のサービス業は絶対に外国に負けないと思います。
年齢も性別も目的も異なる、お客様それぞれの楽しみを見出す
森:「シェイプアップハウス」もクチコミで人気が広がり店舗を増やしていきますが、その成功だけで終わらせず、日本初の男性向けサロン「ダンディハウス」を立ち上げましたね。当時、「え!? 男性がエステを受ける時代になったのか!」と驚きましたが、なぜ男性のエステサロンを作ろうと考えたのですか?
下村:「シェイプアップハウス」に通っているお客さまから「先生、うちの主人も痩せさせてくれない?」や「息子のニキビがひどくて学校に行きたくないって言うから 何とかしてくれない?」という要望をいただいたのがきっかけです。
当時は大きな社長室がありましたが、私は白衣を着て走り回っているだけでほとんど座ることがなかったので、「社長室をつぶして男性向けのサロンをつくろう」という話になったんです。「シェイプアップハウス」1号店オープンの4年後、1986年に「ダンディハウス」を立ちあげました。私は学校を卒業した後に2年ほど留学したのですが、帰国した時に日本人の男性のスーツ姿が貧相に感じられて悲しくなりました。
だから、どうせ男性のサロンをするなら、世界に出ても恥ずかしくないように、「日本の男性はかっこいい」と言ってもらえるようにしたい。そして大成功、大出世する男性を作りたいと思いました。それで、「ダンディな男を作ろう」という思いを込めて「ダンディハウス」と命名したんです。
森:なるほど。かっこいい男性をたくさん輩出してきたわけですね。今は実際、どんな年齢の男性が何を目的に通っていますか?
下村::今は25歳〜35歳あたりが中心ですが、最高齢の方はなんと94歳です!ニキビや毛深さを気にしている方が多いですが、私がカウンセリングしていたころは37〜38歳くらいで「太ったから痩せたい」という方が多かったですね。
皆さん「大学時代のスタイルに戻りたい」と言うんです。
どうやら男性は30代後半で「今、大学時代の体型に戻さないと」と焦るようで…。でも、男性のサロンはリラックスしに来るというより、修学旅行の枕投げのようなイメージがありまして(笑)。ベッドがズラーっと並んでいるのですが、横の方と「僕はこんなことをやってる」「こうしたほうがいいよ」なんて、ずっとお喋りされています。
そんなダンディハウス60店舗、ミス・パリ52店舗を筆頭に、ダイエットセンターやWASPAなど、ミス・パリ・グループ全体で
現在、約150店舗を展開しています。今では、親子3代で通っていたり、20年以上通ってくださっているお客様も沢山いるのですが、長く通っていただくために心がけていることがあります。
1つは「長生きしてもらうこと」。健康で長生きして通ってもらうために、エステだけでなく健康にいい情報やサービスを提供しています。
2つ目に「大成功、大出世してもらうこと」。だって、エステはお金がかかりますから(笑)。そのために、サロンに来たら元気がでて「積極的に頑張ろう!」と思えるようなサービスを提供しています。
3つめは「期待し続けられるように勉強しましょう」という自分たちへの戒めです。技術者が勉強したり資格に挑戦したりして「来年の私にもっと期待してください」と言えるように努力しています。
森:それだけの店舗数に加え、社員数は1,000名を超えているそうですね。それほどの社員がいると、同じ質のサービスを提供するのは大変だと思います。下村社長はスクールも作って人材育成にも積極的に関わっていらっしゃるので、次回は教育について詳しく教えてください。