チャレンジすることが成功への道を拓く 株式会社ユーグレナ 【後編】

食料、環境、エネルギー…世界を脅かす諸問題を解決する切り札として
「ミドリムシ」を掲げ、急成長を遂げている株式会社ユーグレナ。
中学時代から世界の食料問題に着目していた出雲充氏は大手都市銀行を1年で退職し、
培養の目処も立たないままミドリムシの研究開発を手掛けるユーグレナを創立した。
今や食用のみならず飼料やジェット燃料としても注目されているミドリムシ。
その開発や販売で右肩上がりの成長を遂げるユーグレナの
成功の秘訣や企業理念を伺うべく、
経営戦略部で広報を担当する安間美央さんを訪ねた。

株式会社ユーグレナミドリムシ(学名:ユーグレナ)を中心とした微細藻類に関する研究開発及び商品開発、販売などを事業の柱とする。創業社長である出雲充氏が世界の食料問題、環境問題の新たな解決法として、ミドリムシの可能性に着目。世界初のミドリムシの屋外大量培養に成功し、2005年の創業後、2012年に東証マザーズに上場。東大発バイオベンチャーの雄として、各方面から注目されている。


お話をしてくれた、広報担当の安間さん

逆転の発想で世界初の屋外大量培養に成功

ミドリムシ培養の国家プロジェクトの失敗から学ぼうと、出雲氏はミドリムシ研究の中心人物・大阪府立大学の中野長久教授を訪ねた。“培養を成功させたいので、過去のデータを教えてください”と相談した結果、教授は快諾してくれ、さらに全国の研究者に“彼らが訪ねて行ったら協力してあげてほしい”と声をかけてくれたことが、ミドリムシの大量培養成功に道をつけてくれたという。

お金がないため夜行バスで全国の技術者に教えを乞いに行き、さまざまな研究を試した結果、たどりついたのが「無菌の研究室で培養するのは無理」という結論だ。わずかな菌が入り込んだだけで、水槽いっぱいのミドリムシはあっという間に食べつくされてしまう。そこで出雲氏は「ほかの菌をシャットアウトするのではなく、ミドリムシだけが生き残れて、他の菌がいやがる環境の培養液を作ればいい」という逆転の発想に至った。

「そして2005年12月16日—ユーグレナの運命が大きく動いた。それまで耳かき一杯分しか培養できなかったミドリムシがプールを満たし、大量のミドリムシの収穫に成功しました」。


ここが飯田橋のオフィスだ!

逆風、ムシのイメージ…培養に成功しても業績は伸びない

ところが、わずか1か月後に事態は暗転。オフィスを間借りしていたライブドアの強制捜査で、ユーグレナは一気に運命の波に翻弄されることになった。

それまで好感触だった取引先企業が、手のひらを返したように「ライブドアと関係のある会社とは取り引きできない」と言ってきた。さらに培養に成功すればあとはうまくいく、と思っていたが、ミドリムシを知らない人には「ムシ」のイメージで敬遠され、ユーグレナの粉末を食品会社に販売してその日を食いつなぐという生活が続いたそうだ。

業績好転のきっかけとなったのは、2007年に始まった伊藤忠との提携だ。大手企業と取り引きしていることで、その他企業にとっても信頼度は上がり、ミドリムシの認知度も徐々に上がってきた。さらに地球温暖化問題とそれに伴う食料問題がクローズアップされたことも追い風となり、次々に取引先が増えて行ったという。日本科学未来館で販売した「ミドリムシクッキー」も話題になってメディアに取り上げられた。


自社商品も販売中!

チャレンジし続けた人こそ成功はある

数々の逆風に耐え、初志貫徹で「ミドリムシで地球を救う」という夢の実現に向けて着実に歩を進めている株式会社ユーグレナ。チャレンジを大切にする風土は、出雲氏の経営哲学でもある。ユーグレナのオフィスはイス、時計、ブックエンド…いたるところにミドリムシ色である緑色が散りばめられるユーモアあふれる空間だ。「挑戦することをよしとする」という前向きな企業風土が、オフィスに明るい風を吹き込んでいるようだ。

2012年12月にマザーズに上場した目的の一つは「広告宣伝費の調達」のためでもある。「今後は自社商品販売にもより注力していきます。上場をきっかけに皆さまに少しでもユーグレナという名前に触れてもらう機会を増やすことができれば、莫大な宣伝費をかけて広告を打つ以上の宣伝効果が期待できる」からだという。

2020年、東京オリンピックが開催される記念すべき年に、ミドリムシのジェット燃料の実用化を目指しているユーグレナ。「バイオテクノロジーで、昨日の不可能を今日可能にする」—会議室の壁に書かれた言葉の通り、「ミドリムシでジェット機が飛ぶ」日は、意外と近いのかもしれない。


ユーグレナを燃料とした飛行機が飛ぶ日も近い!?