チャット&ゲームコミュニティ「Lobi」や「ART-Meter(絵画の量り売り)」(現在は東急ハンズが運営)などユニークなインターネットサービスを次々に世に生み出してきた面白法人カヤック(正式名称:株式会社カヤック)。カンヌ国際広告賞など国内外での受賞歴も多く、「サイコロ給」などのユニークな社内制度でも注目を集めている。カヤックの代表取締役CEO・柳澤大輔さんに会社設立から現在までの経緯、ユニークな取り組みなどについて話を伺った。
面白法人カヤック
1998年8月に貝畑政徳氏、柳澤大輔氏、久場智喜氏により設立(当時は合資会社)されたwebサービスやアプリ、広告制作などを手掛ける会社。本社は神奈川県鎌倉市にあり、現在はヨコハマ展望台オフィスも一拠点として設ける。経営理念は「つくる人を増やす」。毎月全社員がサイコロを振って給料の上乗せ分を決めたり、全社員参加の合宿や全社員が人事部所属を宣言した「ぜんいん人事部」など、ユニークな制度でも注目を集めている。2014年12月にマザーズに上場。
「面白く働く」という言葉を体現したオフィス
検索サイトで「経営理念」と入力すると、上位に表示されるのがカヤックのwebサイトだ。「経営理念は会社の起業時から重視しており、何度も練り直して内容を見直している」と柳澤さんが話す通り、カヤックは経営の軸となる理念を最重要視している。社名にあえて「面白法人」と冠するだけあって、設立当初からずっと存在感を放っているのが「面白く働く」「面白がる」ことだという。立ち上げの経緯からさまざまな給与・人事制度、オフィスの有り様まで、全方向でまさに「面白法人」と呼ぶにふさわしいのがカヤックだ。
横浜駅にほど近い高層ビルの30階に位置する「ヨコハマ展望台オフィス」を訪れると、入り口に置かれているのは昔懐かしい黒電話。続いてフロア全体が見渡せる場所にお立ち台とマイクが用意されており「このマイクで担当者を呼び出してください」と書かれている。オフィスフロアに足を踏み入れた瞬間から、顧客を驚かせる仕組みが随所にちりばめられている。
入口にも、訪れた人を楽しませる工夫が
漫画のストーリーに触発され、起業を約束
カヤックは1998年8月に貝畑政徳氏、柳澤大輔氏、久場智喜氏の3名で立ち上げた会社で、3人の頭文字(KAYAC)をつなげて社名とした。三氏は同じ大学の同級生で、在学時からそれぞれ個性豊かでお互いを尊敬し合う仲。漫画『サンクチュアリ』(池上遼一著)に触発され、3人での起業を約束したという。
「『サンクチュアリ』は学生2人がジャンケンで進路を決め、1人が政治、1人が極道の世界に進んで、のちに一緒になって日本を変えるという内容です。いわばその起業版で“3人それぞれ違う道を歩んで、2年後に集結するっていいよね”という話になって。そこで、僕がサラリーマンになり、もう1人が大学院で技術を学び、もう1人はアメリカ放浪の旅に出た。 “それ、面白いよな”っていうストーリーに乗っかったわけです」と柳澤氏は笑う。「何の事業をするかは全く決めていなかった」というから、起業のストーリー自体を面白がるところからのスタートだった。
一冊の漫画が、カヤックのきっかけであった
仲間と共に起業し、未来の企業像を決定
アメリカ放浪していた久場氏とは2年間連絡がつかなかったから、「もう忘れているかと思った」と柳澤氏。しかし、「何をするかより、誰とするかのほうが大事。この3人で面白いことをやろう」という思いは、離れていた2年の間も3人の根底に流れ続けていた。柳澤氏と貝畑氏が「そろそろ会社を立ち上げようか」と話していたところに久場氏が帰国して合流し、最初の半年は起業して何をするかを話し合い続けたという。
「そもそも起業に至るまでも、実験みたいなものでしたから、新卒で入社した会社を辞めることに不安はなかったですね」(柳澤氏)。先輩からの依頼で企画の仕事などをし、細々と売り上げをあげていたが、当時の月給は5万円だったという。
そうして話し合いを続けた結果、3人は「面白く働くことに価値を見出すような会社にしたい。そのためには“これが天職だ”と感じる人だけを集めよう」という着地点を見出した。「やりたくないことをやっていたら面白くないから、“天職と思える能力で社会に貢献できる人”を集めた会社にしようと決めました」と柳澤氏は当時を振り返る。
他の人が真似できない唯一無二の物や、すごい物を作れる人を集め、お互いを尊敬し合い、刺激し合える仲間とともに何かを生み出していこう――面白法人カヤックはこうして船出した。
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後編は面白法人ならではのユニークな取り組みや制度、ヒットを生み出すオフィスの秘密などをつぶさにご紹介します!